表紙へ戻る

Ritz'n

りっつんについて

営業のお知らせ・アクセスマップ りっつんの環境方針 読む、りっつん 考える、りっつん りっつん夜学

バックナンバー

第40回りっつん夜学 「水」から考える環境と暮らし 〜水の行方に思考を走らせる〜

第40回を迎えたりっつん夜学、前回のイノシシのお話に引き続き、今回もジオネットワークつくばの後援をいただき「サイエンス」な夜を迎えました。

山室真澄先生

今回の先生は東京大学大学院新領域創成科学研究科の山室真澄先生です。先生のご専門である水界生態系や陸水学を独自の視点で、わかりやすくお話いただきました。

◆山室先生のブログはコチラ!→「Limnology 水から環境を考える」

*ジオネットワークつくば(→HPはコチラ)
生活と科学をつなげるためにつくられた、研究者と生活者を結ぶネットワーク

店主のあいさつ

今回の夜学は、つくばにある300の研究機関と企業、1万3000人の研究者と生活者をつなぐジオネットワークつくばさんの後援をいだき、東京大学大学院新領域創成科学研究科教授の山室真澄さんをお招きして、「水と環境と暮らし」についてのお話をお聞きします。

きんぴらごぼうのにんじんとごぼうとこんにゃくがあの形で、七夕飾りのように木になっていると思っていると最近の子供を私たち大人は嘆きますが、その大人は蛇口をひねると出てくる水の源がどこで、その行く末を知っているでしょうか、子供たちにきちんと説明できるでしょうか。
本日はその侍、山室先生のナビゲートで、私たちが水の旅人となり、環境と暮らしについて考えていきたいと思います。今日は先生がお土産を2つ持ってきてくださいました。
学生時代の先生にブレイクスルーをおこさせるメンターとなった普通の主婦がつくった低温殺菌の牛乳です。りっつんで牛乳が登場するなんて、在り得ない記念すべき最初で最後の瞬間です。先生の「超」鳥瞰的視点の始まりはこの牛乳の味ヌキにはお話できないと思い、牛乳が良い悪いで見ることを今回ご法度としました。

店主のあいさつ

もう一つは、「里山」の「水」をテーマにした映像です。その映像を流しながら、全てが繋がっていることの美しさについて先生からコメントいただき、みなさんから質問をお受けします。
お食事は、ビュッフェ形式になっておりますので、団欒の中で先生と楽しい時間をお過ごしください。

↑ページの先頭へ戻る

“自然”な日本の川の特徴

“自然”な日本の川の特徴

まず私たちの住んでいる日本の川の一般的な特徴について説明していただきました。日本の河川は水源の山地から海までの距離が短く流れが急なため、洪水が起こりやすいという特徴があります。ヨーロッパやアジアの大陸の河川と比較すると、いわゆる“自然”状態にある日本の河川は「河川ではなく滝」なのだそうです。ヨーロッパのロアール川、アメリカのコロラド川など河川長が長く、かつ傾斜が急な河川もありますが、そのような河川は背後にアルプスやロッキー山脈などの山々がそびえているという特殊な環境があります。日本のような短くて急流な河川は太平洋の島弧に位置する島国、たとえばフィリピンなど限られた自然条件の国にしかないのです。

また年間の流出量の変化が大きく、降水の流出率が高いという特徴があります。大陸の河川では上流で大雨が降ってもその洪水がやってくるまでに数日間かかります。何年か前にヨーロッパの河川で洪水が起こったとき、家財道具を積んで人々が引っ越しをするシーンが放映されました。日本の場合は大雨が降ったらほんの数時間で洪水が起こります。これには急流であるという地形的な要因に加えてモンスーンの影響を受けて降水量が多いということも大きな要因となっています。

↑ページの先頭へ戻る

現代っ子が見る日本の川

現代っ子が見る日本の川

ところでこの日本の降水量ですが、ここ100年間で変化が起きています。1900年から2004年のデータを見ると、降水量自体は相対的に減少しているのですが、年変化が激しくなっているのです。このことは治水行政に大きな問題をもたらしています。一般的に日本の治水はダム建設を中心とした水資源開発が中心となっていますが、降水の量が多くても少なくても一定量の水を都市部に供給しなくてはならないのです。

↑ページの先頭へ戻る

戦後、大都市の周辺部ではダム建設が盛んに行われ、ダム湖の樹林化・富栄養化、さらには有害物質の発生が問題となってきました。相模川の上流に位置する相模ダムは1947年、城山ダムは1965年に、支流の中津川上流の宮ケ瀬ダムは2001年に建設され、相模湖、津久井湖、宮ケ瀬湖という3つのダム湖が形成されています。相模湖周辺は観光地化が進み、人口も増え、生活廃水がダム湖に流れ込んでアオコと呼ばれる現象が起こるようになりました。このため、ダム湖内の水を循環させ、水面に浮かんでいるアオコを日光の届かない湖底に沈めて死滅させる「ばっ気」という方法がとられるようになりました。しかし、この湖底に沈んだアオコたちが分解してできた栄養塩は下流のダム湖である津久井湖に流れ込み、更なる富栄養化を引き起こしています。津久井湖の最下流では、アオコの上を水鳥が歩いていました。

ダム湖の栄養塩濃度の高い水が流れ込んだ川では、流れがあるためにアオコではなく、付着藻類がべったりとついています。さらに河床では樹林化という現象が発生しています。上流部のダムで洪水が制御されるために礫が運ばれず、また既にあった礫も動かなくなり、州だったところに草や木が入り込んで定着する現象です。“自然”状態の日本の川は急流なので平野部にまで砂礫が流れてきます。ダムがなければ「賽の河原」のような光景が広がり、そこにひばりが巣を作っていました。今では河床の中にまでニセアカシアなどの外来植物が進入するようになりました。今の子供たちは、このように樹林化が進んだ川しか見ておらず、本当の“自然”な川がどうだったのかを知りません。
このような川の変化について「緑が増えていいじゃないか」と思う人もいるでしょう。本当にそうでしょうか?

↑ページの先頭へ戻る

大阪のおいしい水

大阪のおいしい水

かつてはおいしくないといわれていた大阪の水道水が今変わりつつあります。それは「高度浄水処理」という方法を取り入れたからです。これはかつての“自然”河川では普通に行われていた微生物による水の浄化作用、つまり生物処理を取り入れた方法です。礫の表面や礫の間に生息する微生物による浄化を利用した礫間接触酸化法という方法にも近いやり方です。現在の日本の川から失われてしまった機能を使って、大阪の水はきれいになったのです。

ちなみに、相模川は津久井湖より下流の中津川との合流地点では礫への付着藻類が上流よりも少なくなっていました。なぜでしょうか?この理由として中津川の上流部にあたる宮ケ瀬ダムが2001年の建設でまだ新しく、富栄養化が進んでいないことが考えられます。つまりこの中津川のまだきれいな水が合流することで、相模川の水の有機汚濁が薄められているのです。ただしこの宮ケ瀬ダムもいつかは富栄養化し、今後水質も変化していくでしょう。

↑ページの先頭へ戻る

バイオマニピュレーションとしての50年前の里山・里湖(さとうみ)

バイオマニピュレーションとしての50年前の里山・里湖(さとうみ)

里山とは人間によって管理された二次林の生態系です。里山は前回の夜学で紹介した、イノシシの住処のひとつでもあります。下草刈りをしたり、薪をとったり、きのこや山菜を収穫していました。同じような生態系の管理が平野部の湖沼で行われており、里湖(さとうみ)といいます。平野の湖沼では、かつて水草が繁茂しており、生息する水深によって、抽水植物、浮葉植物、沈水植物などに分けられます。

かつての日本の湖沼では「モク採り」という作業が盛んに行われていました。船上から湖底の沈水植物をとって畑の肥料やトイレットペーパー、工芸材に使用していたのです。中海ではこの「モク採り」のおかげで本来やせた土地であるはずの砂州のうえも肥沃な土地になって綿花の栽培が盛んになり、綿花栽培の中心が大阪からこの地方に取って代わることもありました。さらに中海に流れ込むリンや窒素の多くが取り除かれ、非常によい環境が保たれました。江戸時代は鎖国政策をとっていたため、日本全国が自給自足の生活でした。とにかくあるもので工夫していたのです。このモク採りは高度経済成長が始まるの1950年代半ばまで見られました。

↑ページの先頭へ戻る

モク採りの消滅、農業の変化、多様性?

モク採りの消滅、農業の変化、多様性?

このモク採りという作業は全国各地の湖沼で行われていましたが1950年代終わり頃からいっせいになくなります。この原因として農薬の登録と除草剤使用の増加が挙げられます。日本の除草剤は田植えの梅雨の時期に多く撒かれます。湖沼の周りに水田があれば、撒いた除草剤はすぐに湖沼にも流れ込みます。当時は農業革命と呼ばれ、農薬や除草剤を大量に使用した作業が奨励されていました。現在では危険として使用されなくなったようなものもあったそうです。

霞ヶ浦では1972〜1997年の間に沈水植物が消滅しました。富栄養化によって、日光が湖底まで届かなくなったためです。手賀沼でも1972年までに沈水植物が消滅しました。近年湖沼法の見直しが行われましたが、保護を想定されているのは岸辺の環境のことがほとんどです。水草の種を奪ってしまう、湖底の土砂浚渫もなくなることはありません。アサザなどの浮葉植物を保護することも大切ですが、アサザばかりが繁茂すると湖底にまで日光が届かなくなり、底泥からアンモニアが発生するようになります。本当に必要な政策は何でしょう?

↑ページの先頭へ戻る

肺がんの本当の原因

肺がんの本当の原因

首都圏では、過去50年間で河川水中の塩素イオン濃度があがっています。塩化物イオンは生活排水に多く含まれています。一方、首都圏の渓流域では、硝酸イオン濃度が上昇しています。東京周辺の工場などの排気が風によって山地に運ばれ、酸性雨を降らせます。これが硝酸イオン濃度が上がっている原因です。つくば山の渓流でも硝酸イオン濃度が高くなっています。また斐伊川上流などは周辺の人口が増えていないにもかかわらず、窒素イオン濃度は季節風によって変化します。このような風による水質変化は今後中国の産業化の影響なども強く受けるようになるかもしれません。

↑ページの先頭へ戻る

日本の浄水場では富栄養化の進んだ水を浄水処理するため、塩酸処理が行われています。この結果、有機塩素化合物が形成されます。これが常温常圧で大気中に容易に揮発するVOC(揮発性有機化合物)となります。その代表的なものがトリハロメタンです。高気密・高断熱の山室先生のご自宅でVOCの測定を行ったところ、浴室だけが高い値を示していたことがわかりました。この水はもともと霞ヶ浦から運ばれてきた水です。浄水処理の行われた水道水には確実にVOCが残っていることがわかりました。私たちは知らないうちに、ただお風呂に入っているだけでVOCを体内に取り込んでいたのです。

今、日本では肺ガン患者が増えています。あるテレビ番組の報道によると、空気が原因と考えられていますがその詳細はわかっていません。もしかしたらこのVOCが原因なのかもしれません。現在、化学物質が奇形児などの原因になっていることが言われており、環境省が子供の成長に合わせて大掛かりで長期的な調査を始めています。ただしこの調査項目にトリハロメタンは含まれていません。
起こっている現象や結果からこの化学物質が原因らしいと類推することはできますが、その証拠を突き止めるのは難しいのです。

↑ページの先頭へ戻る

これからの水利用

では何が安全な水なのでしょうか?答えはありません。「何が安全なのか」自分で判断しなくてはならないのです。しいて言えば表流水は飲用以外に使用する。安全を確認できた地下水だけを飲用にするなどの工夫が考えられます。
現在日本は少子高齢化で今後人口が減っていくことが予想されていますが、江戸時代の自給自足に近い生活に戻ると思えばいいのではないでしょうか?水利用やさまざまな問題が解決されるかもしれません。ソ連の援助を断ち切られたキューバは世界で一番サステナブルな社会となっています。日本が財政破綻すれば、もしかすると新しい生活がやってくるかもしれません。ただし、現代のような東京一極集中ではなく、人口が地方にも分散されていることが必要ですが。

私の原点

私の原点

最後にある牧場について紹介されました。東毛酪農と呼ばれる牧場です。この牧場では除草剤を使用しません。原料乳は安全な飼料を食べている健康な乳牛からの生乳で、搾りたての生乳にできるだけ手を加えず、牛乳本来の風味・質などを保つため、低温殺菌、かつリサイクル可能な瓶容器で流通しています。日本の牛乳はほとんどが高温滅菌のものですが、東京の消費者グループの代表の方からから「ドイツから帰国して以来、家の子供たちが日本の牛乳を飲めなくなりました…何とか搾ったままの生乳の良さを生かした、安全な低温殺菌牛乳を生産してもらえませんか?」と言われ、作られたのだそうです。

この東京の消費者グループの代表、小寺ときさんに学生時代にお会いになった山室先生は大きな衝撃を受けました。本当に高温滅菌の牛乳でなくてはならないのか、低温殺菌では問題があるのか、実際に論文を探してみたそうです。その結果牛乳メーカーが宣伝している高温滅菌のよさは必ずしも真実ではないことがわかってきました。
ここが山室先生の研究の原点となりました。本当のことは何なのか、市民としてどのように行動するのか、山室先生の研究の原点はここにあります。

↑ページの先頭へ戻る

そしてお食事の時間

本日のまかない

<本日のまかない>

◆きのこのスープパスタ ◆ジャガイモの海苔和えサラダ
◆季節野菜のマリネ ◆くるみ味噌のおにぎり
◆もちきび入栗おこわおにぎり ◆車麩のフライ
◇デザート:かぼちゃプリン ◇お飲み物:三年番茶、ギンコティー


お食事風景

みなさんの感想から

  • ◆とても楽しく良い時間を過ごさせていただきました。
  • ◆90分はやや息切れをしました、予習が必要な密度でした。
  • ◆マスメディアから流される環境に関わる情報を鵜呑みして考えることをやめたり、歴史や文化や生活から学んで考えて、私たち生活者が生活やものの見方を変えることを恐れずに環境問題を解決していかなければいけないと知りました。
  • ◆次の世代に何を伝えてゆけば良いのか、どう行動すればよいのか、考えさせられるお話でした。
  • ◆「里湖」「里山」関連のお話をさらにお聞きしたいです。
  • ◆研究者のデーターは納得でき、分かりやすい。もちろん鵜呑みにしてはいけないし、主張したいように操作することも可能だが、研究者の話をもっとききたいと思った。環境に自分も関われた夜学だった。
  • ◆会場がもう少し広かったら、豊富な先生の資料をよく見ることができたと思います。
  • ◆素晴らし内容で興味が広がりました。また、新しい企画を期待しております。
  • ◆森林がたくさんあるから、東京・首都圏だからという都市化の視点で、水のきれいさを考えなければいけないと思いました。
  • ◆環境問題を考えるとき、すべてがつながっていると考えていかなければいけないと思いました。
  • ◆とても勉強になりました。水を含めた環境問題のことを考えると、絶望感を感じることがありますが、必ず方法があるものだ、と希望を持ちました。

↑ページの先頭へ戻る

今回の夜学のご案内

【第40回】「水」から考える環境と暮らし 〜水の行方に思考を走らせる〜
(ジオネットワークつくば*後援)
講師:山室 真澄 教授(東京大学大学院新領域創成科学研究科)
9月1日(水) 19:00〜21:30
人数:30名(先着順。定員になり次第締め切らせていただきます。)
参加費:2,000円(お食事付)
メニュー:きのこスープパスタ、胡桃味噌おにぎり、栗おこわ、かぼちゃプリンなど…秋の味覚でお待ちしております。

『水の旅人/侍KIDS』という映画がありました。水の源からやって来た身長17センチの小さな侍と、水質汚染で体を蝕まれ日増しに弱まる侍を身体をはって守る人間の少年が、海を目指して旅に出るアドベンチャーストーリーでした。少年は水の精との関わりで、勇気や自然への優しさと武士の心を学びます。

山室先生のナビゲートで、私たちが水の旅人となり、環境と暮らしについて考える夜学です。

「石油から合成された石油系界面活性剤が含まれる洗濯洗剤などの合成洗剤は水質を汚染する」と認識しているけど、ひとつひとつの単語の概念は曖昧で、それがどう水質を汚染して、やがてどんなサイクルで、どんなかたちで私たちの暮らしに影響を与えるのか、実のところ私達は深く知ることや考えることを億劫がっているのではないでしょうか。

*ジオネットワークつくば
生活と科学をつなげるためにつくられた、研究者と生活者を結ぶネットワーク
http://www.geonet-tsukuba.jp/geonet

■次回夜学のお知らせ、お申込などはコチラからどうぞ!
■別回の夜学レポートもご覧いただけます→コチラからどうぞ!

■お問い合せ:夜学についての内容および講師の個人的なお問い合わせについては、メールで承っております。

ページの先頭へ戻る

表紙へ戻る