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第39回りっつん夜学 「イノシシと道で出会ったら」 〜イノシシが見る人間の社会〜

皆さんお待たせしました!久しぶりのりっつん夜学です。今回の夜学は夏至も過ぎたばかり、夏へと向かう蒸し暑い夜、もう少しで満月を迎える大きな月の下で開かれました。
今回はりっつんでは意外(?)なイノシシのお話です。

イノシシ

皆さんはイノシシと聞くとどのようなイメージをお持ちですか?
イノシシは干支にも数えられ、人間になじみ深い生き物です。最近では、生息域が拡大して、人が道でばったりイノシシと遭遇することも他人事ではなくなっています。イノシシとは一体どんな生き物だろう、彼らは人をどう見ているのだろうか。今日の夜学は知っているようで知らないイノシシの生態を学び、イノシシとの遭遇時の対処法を考えます。また、イノシシから見た人間の姿を考え、人間社会がより住みやすくなるヒントを探ります。
いつもは女性の参加者が多いりっつんの夜学ですが、今回は男性の参加者が半数以上という珍しい夜学です。参加者の職業も専業農家、大学の先生、お医者様…と様々でした。今回の夜学参加者24人のうち、5人が亥年生まれで日本の総人口に亥年生まれが占める割合も高いそうです。

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ジオネットワークつくばとりっつん

今回の夜学は、りっつんがジオネットワークつくばに加盟して初めての夜学です。ジオネットワークつくばは、つくばに多く存在する大学・研究所などと住民の生活をつなげる活動をしています。ベジタリアンレストランでもあり、情報発信基地でもあるりっつん、ジオネットワークつくばとコラボした今夜はいったいどのような夜学になるのでしょうか?

ジオネットワークつくば

生活と科学をつなげるためにつくられた、研究者と生活者を結ぶネットワーク
http://www.geonet-tsukuba.jp/geonet

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講師紹介

独立行政法人 農業・食品産業技術総合研究機構 中央農業総合研究センター 鳥獣害研究サブチームの仲谷 淳さん

今回の講師は、独立行政法人 農業・食品産業技術総合研究機構 中央農業総合研究センター 鳥獣害研究サブチームの仲谷 淳さんです。
30年以上イノシシの研究をつづけられてきたという仲谷さん、今日の夜学はイノシシの生態から始まり、自然環境のお話、そして私たち人間の生き方に至るまで、長年研究をつづけられてきた仲谷さんならではのお話が展開されました。

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イノシシとは?

日本で広範囲に生息するイノシシは、胃の構造が単純であったり、男女の性差が少ないなど、人間とよく似た身体的特徴を持っています。また、居住地域も里山や平野などの起伏が少なく、人間にとっても住みやすい地域を好みます。イノシシも人間も大陸から日本列島にやってきたのですが、日本列島に渡ったのはきっとイノシシのほうが先で、狩猟生活をしていた人間がそのあとを追いかけてきたそうです。人口が増えて土地を広く利用するにつれて、人間はイノシシの生息地域を脅かすようになり、関東平野のイノシシの多くは山間部に追いやられ、千葉県などではほぼ絶滅状態になったそうです。近年、過疎化が進み限界集落などが見られるようになった地域では、人間が里山を利用しなくなったためにイノシシがよく出没するようになりました。
本来、イノシシの生息領域は固定されたものではなく、食べ物や休息地を求めて常に人間との境界を柔軟に変化させることで安定してきました。有蹄類(蹄のある哺乳類)の中では、シカやウシなどは胃が4つあるのに対して、イノシシは人間と同じように胃が1つしかなく、消化に良いものを食べなくてはいけません。イノシシの食べ物の好みは、ちょうど人間の小学生と同じだそうです。ですから、人間の作る農作物が深刻な被害を受けるのは当たり前のことと言えます。「イノシシは山の中で生活するのが当たり前」なのではなく、本来は人間と同じようなところに住みたいと思っているのです。

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イノシシの生活

イノシシの生活

ここでイノシシの生活ぶりについて詳しく教えていただきました。日本のイノシシは単独型社会で、あまり群れを作りません。オスとメスは日ごろ別々に生活し、子供は母親と一緒に行動しますが一歳になると子別れします。

【春】5〜6月ごろ、草や木の枝を積み上げたドーム状の巣でメスが出産を迎えます。一度に4〜5頭出産し、そのうち約半数が一歳の誕生日を迎えることができます。春に出産するのは寒い冬が来るまでに子供が成長するためだそうです。

【夏】イノシシは鼻で地面を掘り、地下のイモ類など栄養価の高い食料を探し当てて食べます。谷に降りて行って沢ガニなどを食べることもあります。暑い夏、イノシシは汗腺がないため、泥浴びをして体温を下げます。 ちなみイノシシは泳ぐことはありません。巷には「海を渡るイノシシ」もいるようですが、これはおそらく敵におわれたりしてどうしようもなくなって泳いだものでしょう、というのが仲谷さんのご意見だそうです。

【秋】収穫の秋、イノシシはドングリなどの木の実を食べるようになります。殻も器用に剥くことができます。この頃のイノシシが一番脂がのっており、ボタン鍋にするとおいしいのだそうです…。「りっつんさんでは食べられませんが、ちょこっとだけよそで浮気して食べてみてください」と仲谷さん。

【冬】発情期を迎えたオスは、泥浴びをすることもあります。発情しているメスを見つけると3日間ほどガードしては最終日に交尾をし、交尾終了後は別れてしまいます。強いオスは発情しているメスを次々にガードして何度でも交尾をすることができ、一夫多妻制の社会と言えます。オスは子育てをしません。その代わり発情期の3ヵ月間は、ほぼ飲まず食わずでメスを探し、必死でガードするためげっそりとやせてしまいます。

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イノシシは夜行性?

イノシシは夜行性?

ここで仲谷さんが一枚の写真を見せて参加者の皆さんに質問されました。「この写真、何かおかしいところはありませんか?」、一同考え込んでいましたが、参加者のお一人が答えました「昼間に撮っています」。確かにその写真は明るい陽光の下のイノシシを映したものでした。六甲山で人によくなれているイノシシなのだそうです。イノシシは本来昼行性でおそらく色覚もあるだろうと言われていますが、狩猟の行われている地域では人間を怖がって夜行性の生活をしているそうです。その行動範囲は直径1kmほどで、他のグループとは避けあって暮らしています。

さらに仲谷さんは神戸新聞掲載の写真を一枚見せてくださいました。驚いたことに、そこでは横断歩道を渡るイノシシとそれを待っている車、さらにイノシシとすれ違うように横断歩道を渡る女性の姿が映っていました。これはどういうことでしょうか?

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「知識や経験で人は変わります」と仲谷さん。
普通、山奥で調査をしていると人に出会うことは滅多になく、突然人に出くわすとびっくりします。それは予想しないことが起きるからです。けれども、いつも人に出会うようなところで知らない人に会っても、そうびっくりすることはありません。「生き物は初めてのことでも何度か経験すると柔軟に行動を変える」のだそうです。六甲山では狩猟が禁止されています。イノシシは人に近付いても危険ではないことを「経験」して知っていますし、人もまたイノシシを怖がりません。六甲山では、人間とイノシシがある種の共生関係を持っているようです。
普通、山(里山だけでなく、奥山でも)に入ってもイノシシに遭遇することは滅多にありません。これはイノシシが人間から逃げたり、隠れたりしてくれているのです。イノシシの方から積極的に人間を襲うことはありません。イノシシが人間を襲うのは、狩猟など人間から危害を加えられると危機感を感じた時や、人間の連れている犬などに追われた時です。あくまで「自分の身を守るために」襲いかかるのです。猪突猛進というのはイノシシが自分の身を守るために必死になって突進している姿のことを言い、最高で時速40kmにもなります。特に背中の毛を逆立てて興奮しているイノシシは危ないので絶対に近付いてはいけません。犬を連れていたら、犬を放して自分も逃げることが一番いいそうです。よく住宅地などに入ってしまったイノシシを警察などが一生懸命捕まえようとしますが、イノシシはとり囲まれると殺されると思ってさらに興奮します。基本は興奮させずに、山に誘導すること。
またイノシシが出没する地域では車の運転なども気をつける必要があります。イノシシには車の危険性が分かりません。JR西日本の電車遅延理由のうち、事故の多くは野生動物との接触なのだそうです。

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生物は損得で生きている

生物は損得で生きている

「動物が生きていくために大切なものは何でしょう?」と仲谷さん。ある参加者の方が「ハート」と答えました。仲谷さんは笑いながら「ロマンティストですね、でも生物学としては残念ながらはずれです」。答えは「食料」と「身の安全(外敵などからの)」です。どういうところに住んでいるのかで、この2つの要素が異なり、動物がどのような社会構造を持っているかに大きく影響します。一般的に森林で生活している動物は体が小さく、単独型の生活をして、群れを作りません。これは栄養価の高い食料が離れたところに点在するために1匹ずつ縄張りを作って他の個体から守った方が得になるためです。一方草原では体も大きくなり、外敵に対し常に警戒しなくてはならないために、群れを作って共同して警戒したり、防衛した方が得になるのです。また一夫多妻制が発達し、メスが大きくて強いオスを選ぶようになるために、オスの体が大型化していきます。
人間を民族で見た場合、世界に存在する849の民族社会のうち、8割は一夫多妻制をとっています。これは道徳的な問題ではなく、それぞれの環境に対応するために一夫一妻制、一夫多妻制のどちらでもありうるのだということを示しているのです。人間もまた、柔軟性を持っています。

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利己性を前提とした共生社会

利己性を前提とした共生社会

コオロギのオスはメスを引き寄せるために鳴くのですが、最近では鳴かないオスのコオロギが話題になっています。鳴くオスの近くに隠れていて、鳴くオスにひきつけられてやってきたメスを横取りするのだそうです。
さて、鳴くオス・鳴かないオスはどちらが得なのでしょう?周りのみんなが鳴くオスばかりであれば、鳴かないで鳴くオスに近付いてくるメスを待った方が得になります。そのうち鳴かないオスが増えてきます。逆にもし周りのオスみんなが鳴かなければ、鳴かないで待っていてもメスは近づいてきませんから、たとえ敵に見つかるリスクを背負ってでも鳴いてメスを呼んだ方が得です。今度は鳴くオスが増えていきますが、鳴かないオスよりも損になるところで止まります。つまり鳴くオスも鳴かないオスもどっちも損得が同じくらいのところで両者の割合が落ち着いて集団内で安定するのです。不思議なことに100%鳴くオス、100%鳴かないオスという状態になることはありません。これは人間同士の関係でも同じことが言えます。ハト派とタカ派が混在する集団があっても、どちらか一方だけで存在することはないようです。動物がある行動をするかしないか、ということは周りの相手がどのように行動するかに大きく係わっています。そこには個体レベルでの損得が大きく関係しているのです。

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お話の最後に仲谷さんは個体の「利己性」ということを強調されました。動物にとって「得」とは子孫の増加、生残を意味します。一方「損」とは子孫の減少、絶滅を意味します。そのような自然選択には人間が持つ道徳や善悪の価値観は無関係です。動物では、時として自分の子ども以外の子を育てることもあります。これは、血縁度の高い母親や妹の子などを通して、自分に近い遺伝子を残すという面から、自分にとって得になるとも考えられます。
人間も動物同様、その行動には利己性が強く働きます。では人間に利他的な行動は存在しないのでしょうか?「情けは人のためならず」という言葉があります。これは「情けは人のためにならない」のではなく、「情けは人のためではなく、いずれは巡って自分に返ってくるのであるから、誰にでも親切にしておいた方が良い」という意味です。つまり、人のために何かをするのではなく、自分の利己性をまず認めること、そして他人の利己性とも折り合いをつけて生きていく こと、これが共生です。イノシシはこの「共生」を上手に行う、非常に「社会的」な生き物なのかも知れません。

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そしてお食事の時間

本日のまかない

<本日のまかない>

◆大豆たんぱくの串揚げ ◆人参の丸焼き 木の実ソース
◆車麩のばら肉風煮付け ◆ペポカボチャ(ズッキーニ)のごま酢和え
◆古代穀物のおにぎり2種(黒米、カムット麦)
◆古代蓮根と葛のとろとろスープ ◇デザート:くるみ葛餅
◇お飲み物:アイス無茶空茶、穀物(どんぐり)ホットコーヒー


まかない風景

さて、本日のまかないはベジタリアンりっつんにしかできない、オリジナルメニュー。イノシシの大好きな食材を使用したお料理です。お食事をしながらもお話がはずみます。30年以上イノシシを追いかけられてきた仲谷さんのお話は示唆に富み、哲学的でさえあります。皆さん夢中で聞き入ってしまいました。

ここ100年ほどの間に日本の人口は3倍に膨れ上がり、里山が耕されてイノシシなどの野生動物が追いやられた一方で、現在ではそれと同じくらいのスピードで過疎化が進んでいます。イノシシと人との衝突は避けられないものになっています。
特に関西の100m程度の標高の山々は殆ど耕されているために、イノシシの生息域と人間の生活範囲がとても近いところにあります。「現在の農業は生産性を重視し過ぎ」と仲谷さんは警鐘を鳴らします。本当に人間に必要な面積はどこまでか、もっと人間の暮らしのあり方や自然の保護といったマクロな視点に立って考える必要があるでしょう。


お食事風景

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みなさんの感想から

  • ◆イノシシは仲谷先生のように温和でやさしい動物なのではないかと思いました。
  • ◆イノシシとコミュニケーションがとれる世界とは素敵な世界だと思いました。
  • ◆イノシシの被害で困っていて大変ですが、近くに居て欲しいなあ、と思いました。
  • ◆仲谷淳さんと膝を交えてゆっくり酒を飲みたいです!!
  • ◆生物学的な視点をベースに、人間を含めた生き物をみると色々めんどくさいことがスッキリするように思えた。
    哲学的に考えるのはそのあとで時間があったらすればいいと感じた。
  • ◆生物学、生き物、人間の感情等に興味があります。
  • ◆イノシシを通じて、利己的だということと、共生ということがつながってよかった。
  • ◆もっともっとお話しをきいていたかった。
  • ◆朝までお話をしていてもあきないと思った。

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今回の夜学のご案内

【第39回】イッシシ(猪)とニッシシ(人間)のお話
「イノシシと道で出会ったら」 〜イノシシが見る人間の社会〜
(ジオネットワークつくば*後援)
講師:独立行政法人 農業・食品産業技術総合研究機構
中央農業総合研究センター 鳥獣害研究サブチーム 仲谷 淳 さん
6月23日(水) 19:00〜21:30
人数:30名(先着順。定員になり次第締め切らせていただきます。)
参加費:2,000円(お食事付)
メニュー:葛や木の実など、イノシシが好きな食材を使ったお料理

イノシシは干支にも数えられ、人間になじみ深い生き物です。最近では、生息域が拡大して、人が道でばったりイノシシと遭遇することも他人事ではなくなっています。イノシシとは一体どんな生き物だろう、彼らは人をどう見ているのだろうか。
知っているようで知らないイノシシの生態を学び、イノシシとの遭遇時の対処法を考えます。また、イノシシから見た人間の姿を考え、人間社会がより住みやすくなるヒントを探ります。

*ジオネットワークつくば
生活と科学をつなげるためにつくられた、研究者と生活者を結ぶネットワーク
http://www.geonet-tsukuba.jp/geonet

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